不安は誰もが感じる正常な感情です。しかし不安の程度が強すぎる、続く期間が長い、日常生活に支障が出るとき、それは「不安障害」として治療の対象となります。生涯で約10人に1人が何らかの不安障害を経験するとされています。
不安障害の主な種類
※DSM-5(2013年)では強迫症(OCD)・PTSD・急性ストレス障害は「不安障害」から独立したカテゴリーに分類されましたが、不安症状を主体とする疾患として本記事では合わせてご紹介します。
パニック障害
突然の激しい動悸・息切れ・胸痛・めまいと、「このまま死ぬかもしれない」という強烈な恐怖が繰り返し起こります(パニック発作)。発作後は「また起きるのでは」という予期不安が続き、発作が起きた場所(電車・人混みなど)を避けるようになります。
社交不安障害(社交恐怖)
他者に注目される状況(スピーチ・会議での発言・食事など)で著しい恐怖を感じ、回避するようになります。「恥をかくのでは」という恐れが中心です。
強迫性障害(OCD)
不合理とわかっていても繰り返す考え(強迫観念)と、不安を和らげるための行為(強迫行為)が特徴です。鍵の確認・手洗いの繰り返し・汚染への恐怖などが代表例です。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
生命の危機を感じる体験の後、フラッシュバック・悪夢・感情の麻痺・過覚醒などが1ヶ月以上続きます。
全般性不安障害(GAD)
特定の対象に限らず、仕事・健康・家族など様々なことへの制御困難な心配が6ヶ月以上続きます。筋緊張・疲れやすさ・集中困難を伴います。
治療
認知行動療法(CBT)は不安障害に対して最もエビデンスが確立した心理療法です。「不安を引き起こす状況に段階的に慣れる」曝露療法が特に有効です。薬物療法では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第一選択薬です。日本では不安障害の種類によって保険承認を受けているSSRIが異なります(パロキセチン〔パキシル〕はパニック障害・社交不安障害・強迫性障害・PTSDに適応、セルトラリン〔ジェイゾロフト〕はパニック障害・PTSDに適応など)。
SNRIについては、国際ガイドラインでは第一選択薬に含まれますが、日本では多くのSNRIが不安障害への保険適応を持っていません。例外としてベンラファキシン(イフェクサー)が社交不安障害・全般性不安障害に承認を取得しています。実臨床では保険適応外でSNRIが使用される場合もありますが、その際は患者さんへの十分な説明が必要です。
不安は個性でもある
不安を感じやすい性質は、危険を察知し慎重に行動するという進化的な意味を持っています。治療の目標は「不安をゼロにする」ことではなく、「不安に振り回されない生活を取り戻す」ことです。
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参考文献・出典
- American Psychiatric Association. DSM-5 Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. APA. 2013.
- 日本不安症学会. 不安症の診断と治療ガイドライン. 日本不安症学会. 2021.
- Kessler RC, et al.. Lifetime prevalence and age-of-onset distributions of DSM-IV disorders in the National Comorbidity Survey Replication. Archives of General Psychiatry. 2005.
- Hofmann SG, Smits JA. Cognitive-behavioral therapy for adult anxiety disorders: a meta-analysis of randomized placebo-controlled trials. Journal of Clinical Psychiatry. 2008.
- Baldwin DS, et al.. Evidence-based pharmacological treatment of anxiety disorders, post-traumatic stress disorder and obsessive-compulsive disorder. Journal of Psychopharmacology. 2014.
著者:長友 恭平(精神保健指定医 / よつば加納クリニック 院長)|最終更新:2026年4月

