せん妄の症状(夜間の混乱・幻覚・見当識障害)の概要と対応について説明します。高齢者や術後に多いせん妄の原因・予防についても解説します。
せん妄の主な症状
- 意識の変動:日中はうとうとしているのに、夜間に急に興奮・混乱する
- 見当識障害:今がいつ・どこにいるか分からなくなる
- 幻覚・妄想:実際にはいない人物が見える、被害的な思い込みが生じる
- 活動低下型:逆に静かでぼんやりしている(見落とされやすい)
せん妄の3つの要因
せん妄は以下の3要因が重なったときに発症しやすくなります。
| 要因 | 具体例 |
|---|---|
| 準備因子(もともとのリスク) | 高齢・認知症・視聴覚障害 |
| 直接因子(引き金) | 手術・感染症・脱水・薬剤(抗コリン薬・睡眠薬・オピオイド) |
| 促進因子(悪化要因) | 環境変化(入院・ICU)・身体拘束・不眠 |
治療:環境調整が最優先
原因の除去と環境調整が治療の第一歩です。昼間は明るく夜は暗くして昼夜のリズムを整える、時計・カレンダーを置く、眼鏡・補聴器を使用するなどが有効です。身体拘束はせん妄を悪化させるため最小限にします。
抗精神病薬はせん妄に対して適応外使用が多く、錐体外路症状・過鎮静・QT延長などの副作用に十分な注意が必要です。ベンゾジアゼピン系はアルコール離脱せん妄などの例外を除き原則として避けます。
せん妄の予後
せん妄は多くの場合、原因が改善されれば回復します。しかし、せん妄を経験した高齢者はその後の認知症発症リスクが高まることが示されています。早期発見・早期対応が重要です。
家族・介護者が気づくサインと対応
せん妄は本人よりも周囲が先に気づくことが多い状態です。以下のような変化が急に現れた場合は、医療者にすぐ伝えてください。
- 昼夜が逆転し、夜中に落ち着かずに動き回る(夜間せん妄)
- 「ここはどこ?」「今日は何日?」などの見当識の乱れ
- 点滴や尿道カテーテルを抜こうとする
- いない人が見える・変な声が聞こえると訴える
家族ができることとして、慣れた写真や持ち物をベッドサイドに置く、窓から自然光を入れて昼夜のリズムをつけるといった環境調整が効果的なことがあります。身体拘束はせん妄を悪化させる場合があるため、医療チームと相談しながら対応することが重要です。
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参考文献・出典
- American Psychiatric Association. DSM-5 Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. APA. 2013.
- Inouye SK, et al.. Delirium in elderly people. Lancet. 2014.
- 日本総合病院精神医学会. せん妄の治療指針 第2版. 星和書店. 2015.
- Witlox J, et al.. Delirium in elderly patients and the risk of postdischarge mortality, institutionalization, and dementia: a meta-analysis. JAMA. 2010.
- 日本老年医学会. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015. 日本老年医学会雑誌. 2015.
🩺 院長コメント(長友 恭平)
せん妄は入院中の高齢者に多く見られますが、在宅でも夜間に突然「別人のようになる」ことがあります。ご家族が初めて目にすると非常に驚かれますが、多くの場合は原因(感染症・薬・脱水など)を取り除くことで改善します。「認知症が一気に進んだ」と誤解されやすいため、正確に鑑別することが重要だと感じています。
著者:長友 恭平(精神保健指定医 / よつば加納クリニック 院長)|最終更新:2026年4月
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