「夏は暑くて眠れない」「朝起きても疲れが取れない」——夏の睡眠悩みは多くの方が経験することです。質の良い睡眠は心身の健康の基盤ですが、夏はその睡眠を妨げる要素が重なりやすい季節でもあります。今回は夏の睡眠が乱れる仕組みと、今日から取り組めるセルフケアをお伝えします。
なぜ夏は眠りにくいのか
① 深部体温が下がりにくい
人は眠りに入るとき、体の内部の温度(深部体温)を下げることで眠気を引き起こします。ところが気温が高い夜は体から熱が逃げにくく、深部体温が下がりにくいため、「眠れない」状態が続くことがあります。
② 概日リズム(体内時計)の乱れ
夏は日照時間が長く、夜遅くまで明るい環境にいることで、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が遅れやすくなります。また、夏休みや夜型の生活習慣が体内時計をズラし、寝付きにくさや朝の倦怠感につながることがあります。
③ エアコンの「冷やしすぎ」
冷房が効きすぎた環境では体が冷えて自律神経が乱れ、逆に眠りが浅くなることがあります。室温が低すぎると深部体温を下げようとする働きが妨げられる場合があります。
夏の睡眠環境の整え方
寝室温度は26〜28℃を目安に
日本睡眠学会などが推奨する夏の寝室温度は26〜28℃が目安とされています。「冷やしすぎず、暑すぎない」環境を作ることで、体が自然に深部体温を下げやすくなります。タイマー機能を使い、就寝後2〜3時間で温度を上げる設定も効果的なことがあります。
就寝1〜2時間前にぬるめのシャワーを
38〜40℃のぬるめのシャワーや入浴は、一時的に体表の温度を上げた後、深部体温を下げる効果が期待されます。熱すぎるお湯は交感神経を刺激して逆効果になることがあるため注意が必要です。
寝室は「暗く・静かに」
光と音は睡眠の質を下げる大きな要因です。遮光カーテン・耳栓・アイマスクを活用することで、夏の早い夜明けや外の騒音対策になります。
夏バテと睡眠の悪循環
食欲低下・倦怠感が続く「夏バテ」は、睡眠不足によって悪化することがあります。睡眠が浅いと疲労が回復しにくく、さらに食欲や意欲が低下する悪循環に陥りやすくなります。
水分・ミネラル(特に塩分・カリウム)の補給が基本となります。日中の眠気対策として短い昼寝(15〜20分程度)が急性的な眠気の軽減や短期的なパフォーマンス回復に役立つことがありますが、慢性的な睡眠負債を「解消」するほどの効果があるかどうかは科学的に十分に検証されておらず、あくまで「一時的な補完」と考えるのが適切です。
また、昼寝の時間帯と長さには注意が必要です。午後3時以降や30分を超える昼寝は、夜間のメラトニン分泌のタイミングを乱し、かえって夜の入眠を妨げることがあります。行う場合は午後2〜3時より前に、15〜20分以内にとどめることが推奨されています。
「睡眠薬に頼る前に」試してほしいこと
- 毎日同じ時間に起床し、朝の光を浴びる
- 就寝前1時間はスマートフォンの使用を控える
- カフェインは午後2時以降に控える
- 昼寝は15〜20分・午後3時より前に限定する(夜間のメラトニン分泌を乱さないため)
これらを2週間試しても改善しない場合や、日中の生活に支障が出ている場合は、睡眠外来・精神科・心療内科への相談をお勧めします。
受診を検討するタイミング
以下に当てはまる場合は専門家に相談を検討してください。
- 入眠に30分以上かかることが週3日以上・1か月以上続く
- 睡眠不足から日中の集中力・気分に大きな支障が出ている
- 「眠れないこと」への不安が強くなっている
まとめ
夏の睡眠悩みは多くの方に共通する問題です。寝室環境・生活習慣を少しずつ整えながら、改善しない場合は早めに専門家を頼ってください。
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参考文献
- 日本睡眠学会「快眠のための生活習慣」2021
- 三島和夫「睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版」じほう 2019
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」2022
著者:精神保健指定医・長友恭平(よつば加納クリニック院長)
🩺 院長コメント(長友 恭平)
熱帯夜が続くと睡眠の質が下がり、疲れが蓄積します。エアコンの使い方や就寝前の体温調節について相談される方も多く、睡眠環境の整え方は薬と同じくらい重要だと感じています。「クーラーをつけると体に悪い」という思い込みで寝苦しい夜を過ごしている方には、適切な使用を積極的にお勧めしています。
ちなみに、決定すること・考えること自体もコストです。毎日の食事選びをラクにしたい方は時短×健康ブログもどうぞ。

