👉 大人のASDの全体像については「大人のASD(自閉スペクトラム症)とは?特徴・診断・支援を精神科医が解説」をご覧ください。
発達障害の相談で「ASDとADHD、両方の特徴がある」と言われる方は少なくありません。実際、ASDとADHDは併存(合併)する頻度が高いことが知られています。DSM-5(2013年)以降、両方の診断を同時につけることが可能になりました。
この記事では、ASDとADHDの違い・共通点・併存する場合の治療と対処法を解説します。
ASDとADHDの比較
| 特徴 | ASD(自閉スペクトラム症) | ADHD(注意欠如多動症) |
|---|---|---|
| 中核症状 | 社会的コミュニケーションの困難、限定的な興味・反復行動 | 不注意、多動性、衝動性 |
| 注意の特徴 | 興味のあることには深く集中する(過集中) | 注意が散りやすく、興味がないことに集中し続けることが困難 |
| 対人関係 | 暗黙のルールが読みにくい、関心が薄いことも | 話を聞かずに割り込む、衝動的な発言で相手を傷つける |
| こだわり | ルーティンへの強いこだわり、変化への抵抗 | 飽きっぽく、新しい刺激を求めやすい |
| 感覚過敏 | 高頻度(音・光・触覚など) | あることもあるが、ASDほど顕著ではないことが多い |
| 実行機能 | 計画は立てられるが柔軟な変更が苦手 | 計画を立てること自体が苦手、先延ばし傾向 |
併存はどのくらい多いのか
- ASDの方の約50〜70%にADHDの特徴が認められるとする研究があります(Rommelse et al., 2010)
- 逆にADHDの方の約20〜50%にASDの特徴があるとされています
- DSM-5以降、ASDとADHDの同時診断が認められたことで、より正確な支援につながっています
併存している場合の治療方針
薬物療法
- ADHD症状への薬物療法:メチルフェニデート〔コンサータ〕、アトモキセチン〔ストラテラ〕、グアンファシン〔インチュニブ〕が使用されます
- ASD症状への薬物療法:ASDの中核症状に対する特効薬はありませんが、易刺激性(イライラ・かんしゃく)に対してアリピプラゾール〔エビリファイ〕が使われることがあります
- 併存の場合:まず日常生活への影響が大きい症状から治療を始め、段階的に調整するのが一般的です
心理社会的支援
- 環境調整:ASDの感覚過敏対策とADHDの注意散漫対策を組み合わせる(静かな環境+タイマーでの区切り)
- ソーシャルスキルトレーニング(SST):対人関係のスキルを具体的に学ぶ
- 認知行動療法(CBT):不安や抑うつが併存している場合に有効
日常生活での工夫
- ルーティンを作る(ASD的工夫)+柔軟さを残す(ADHD的工夫):基本のスケジュールは固定しつつ、15分の「自由時間」を挟む
- リマインダーを多用する:ADHDの忘れっぽさ対策としてスマホのアラーム・付箋を活用
- 「一つずつ」を意識する:ASDの過集中とADHDの注意散漫のバランスをとるため、タスクを小分けにする
- 休息を計画的に取る:ASDの感覚過敏とADHDの疲労しやすさの両方に対処するため、休憩を「予定」として組み込む
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まとめ
- ASDとADHDは異なる特性だが、併存する頻度は非常に高い
- ASDは「社会的コミュニケーション・こだわり」、ADHDは「不注意・多動・衝動性」が中核
- 併存している場合は、日常生活への影響が大きい症状から順に治療を進める
- ルーティン+柔軟さ、リマインダー、タスクの小分けが実生活で役立つ
【免責事項】本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状が続く場合や気になることがある場合は、医療機関を受診してください。
著者:精神保健指定医・長友恭平(よつば加納クリニック院長)
著者:精神保健指定医・長友恭平(よつば加納クリニック院長)
参考文献
- Rommelse NNJ, et al. “Shared heritability of attention-deficit/hyperactivity disorder and autism spectrum disorder.” Eur Child Adolesc Psychiatry. 2010;19(3):281-295.
- 日本精神神経学会「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」(医学書院、2014年)
- 厚生労働省「発達障害の理解のために」
- Antshel KM, et al. “Autism spectrum disorder and ADHD: overlapping phenomenology, diagnostic issues, and treatment considerations.” Curr Psychiatry Rep. 2016;18(3):34.
🩺 院長コメント(長友 恭平)
ASDとADHDは異なる疾患ですが、重なる特性が多く鑑別が難しいこともあります。「どちらかに決めなければいけない」と思わずに、今どんな困りごとがあるかを中心に支援策を考えることが現実的です。
