「もしかして依存症?」と感じたときに
毎日大量に飲む、飲まないとイライラする、約束を守れなくなった——こうしたサインに気づいた家族は、どう対応すればよいのでしょうか。
ここでは、家族が陥りやすい「共依存」の問題と、適切な距離感の保ち方をお伝えします。
「共依存」とは何か
共依存とは、飲酒者の世話をすることで自分の存在価値を見出してしまう関係性のことです。
- 「私がいなければ、この人はダメになる」という思い込み
- 酔って帰宅した後の世話、後始末を繰り返す
- 飲酒の問題を外部に隠す(職場に嘘の連絡をする等)
- 自分の生活や趣味を犠牲にして相手の世話に没頭する
共依存は「イネイブリング(甘やかし行動)」とも呼ばれ、結果的に本人の治療開始を遅らせてしまいます。
家族にできること・できないこと
できること
- 飲酒による問題の「肩代わり」をやめる
→ 二日酔いで会社を休むなら、本人が自分で連絡する - 受診を提案する(強制はしない)
→ 「心配だから、一度先生に相談してみない?」という伝え方 - 家族自身が相談する
→ 精神保健福祉センター・保健所は家族だけの相談にも対応しています - 家族会・自助グループに参加する
→ Al-Anon(アラノン)は、依存症者の家族のための自助グループです
できないこと(してはいけないこと)
- ✕ お酒を隠す・捨てる → 怒りを招き、関係が悪化するだけ
- ✕ 「もう飲まないで」と繰り返す説教 → 逆効果
- ✕ 飲酒中に議論する → 酔っている状態では建設的な話はできない
- ✕ 暴力・暴言に耐え続ける → 身の安全を最優先にしてください
CRAFT(クラフト)という方法
CRAFT(Community Reinforcement And Family Training)は、家族が学ぶことで本人の治療につなげるプログラムです。
- 研究では、CRAFTを学んだ家族の約64%が、本人を治療につなげることに成功しています(Meyers, 2002)
- 従来の「対決的介入(インタベンション)」の成功率30%と比べて大幅に高い
- 日本でも一部の医療機関・精神保健福祉センターで実施されています
- 当院(よつば加納クリニック)でもCRAFTプログラムを実施しています。ご家族だけでの受診も可能ですので、お気軽にご相談ください
家族が使える相談窓口
| 窓口 | 内容 |
|---|---|
| 精神保健福祉センター | 無料・家族だけの相談OK・全国設置 |
| 保健所 | 地域の相談窓口・訪問対応も可能 |
| Al-Anon(アラノン) | 依存症者の家族のための自助グループ |
| 心療内科・精神科 | 家族の心身の不調にも対応 |
参考文献
- Meyers RJ, et al. A randomized trial of two methods for engaging treatment-refusing drug users through concerned significant others. J Consult Clin Psychol. 2002;70(5):1182-1189.
- 厚生労働省「依存症対策全国センター」
- Al-Anon Family Groups Japan(アラノンジャパン)
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子どもへの影響とACOAの概念
アルコール依存症の親のもとで育った子どもには、成長過程で特有の影響が生じることが知られています。このような方を「成人したアルコール依存症者の子ども(ACOA: Adult Children of Alcoholics)」と呼びます。
子ども時代に受けやすい影響
- 親の飲酒状態が変わるため「今日のお父さん(お母さん)はどちらか」を常に読み取る必要があり、過度に注意深くなる
- 「家の問題を外で話してはいけない」という暗黙のルールを守るため、孤立しやすい
- 親の世話をすることで「子どもらしい時期」を持てなかった(ペアレント化)
- 暴力・ネグレクト・感情的虐待にさらされるリスクがある
ACOAに見られやすいパターン(大人になってから)
- 「常に完璧でなければ」という強い強迫性
- 承認欲求が強く、他者の評価に依存しやすい
- 信頼関係を築くことが難しい、または過度に依存的な関係を作りやすい
- 自分のニーズを後回しにして他者の世話をしすぎる(共依存に陥りやすい)
- 感情の表現が苦手、または感情的な爆発が起きやすい
これらのパターンはACOAの「宿命」ではありません。適切なカウンセリングや自助グループ(ACOAの自助グループなど)を通じて、回復と成長が可能です。
自分自身の回復(家族も治療が必要)
アルコール依存症の家族支援で見過ごされがちなのが、「家族自身も助けを必要としている」という現実です。
家族も相談できる場所
- アラノン(Al-Anon):アルコール問題を持つ人の家族・友人のための国際的な自助グループ。全国各地でミーティングが開かれています。オンライン参加も可能
- 精神科・心療内科の家族相談:本人を連れてこなくても家族だけで相談できる外来。家族の対処法を専門的にアドバイスしてもらえる
- 精神保健福祉センター:都道府県・政令市が設置。無料の専門相談が受けられる
- 依存症相談拠点機関:各都道府県に設置されており、依存症についての情報提供・相談・支援機関への紹介を行っている
家族が回復するとはどういうことか
「回復」とは、必ずしも本人が断酒することではありません。家族自身が:
- 自分の人生に集中できるようになること
- 本人の飲酒をコントロールしようとするのをやめること
- 「私は変えられないものをコントロールしようとしていた」と気づくこと
- 自分自身の喜びや生活の充実を取り戻すこと
これらを達成することが、家族の「回復」です。
限界設定と別居・離婚の判断
アルコール依存症の家族関係において「どこまで支え続けるか」は非常に難しい問いです。
限界設定(リミットセッティング)とは
「ここからは絶対に許さない」という明確な境界を本人に伝えることです。具体的な例として:
- 「飲んだ状態で運転するなら一緒に乗らない」
- 「子どもの前で飲んだ状態で怒鳴るなら、子どもを連れて出る」
- 「借金を作ったら肩代わりしない」
限界設定は感情的に伝えるのではなく、穏やかに・明確に・繰り返し伝えることが重要です。そして、伝えた通りに実際に行動することが信頼性につながります。
別居・離婚を考えるとき
別居・離婚は「諦め」ではなく、自分と子どもを守るための選択肢の一つです。以下のような状況では、専門家(精神科医・弁護士・DV相談窓口)への相談をためらわないでください。
- 身体的暴力がある、またはそのリスクがある
- 子どもへの虐待が懸念される
- 本人が治療を全く拒否し、状況が悪化し続けている
- 家族自身の健康(精神的・身体的)が著しく損なわれている
よくある質問(Q&A)
Q1. 本人が「病院に行きたくない」と言います。どうすればよいですか?
本人の意思が最も重要ですが、家族が先に精神科・依存症相談拠点機関・精神保健福祉センターに相談することから始めることができます。CRAFT(コミュニティ強化と家族訓練)という家族介入プログラムも有効で、家族が適切なコミュニケーションをとることで本人が治療に踏み出す可能性を高めるとされています。
Q2. お酒を隠す・捨てることは有効ですか?
短期的には一時的な飲酒を止めることができますが、依存症の根本的な解決にはなりません。隠したり捨てたりする行動は、しばしば本人との信頼関係を損ない、隠れて飲む行動を誘発することがあります。また、家族が監視・管理する役割を担い続けると、共依存パターンが強化されるリスクがあります。
Q3. アラノンはどうすれば参加できますか?
アラノン・ファミリー・グループ・ジャパンのウェブサイト(al-anon.or.jp)でミーティングの日程・場所を検索することができます。初参加でも気軽に見学できる雰囲気があります。オンラインミーティングも実施されているため、遠方の方や外出が難しい方も参加しやすくなっています。
著者:精神保健指定医・長友恭平(よつば加納クリニック院長)
長友 恭平(ながとも きょうへい)
精神保健指定医・精神科専門医|よつば加納クリニック院長
🩺 院長コメント(長友 恭平)
家族がアルコール依存症の場合、支えようとするあまり「共依存」に陥ることがあります。お酒を隠す・尻拭いをするといった行動が、結果的に依存を長引かせることがあるという事実は、家族にとって受け入れがたい情報です。でもその理解が、回復への最初の一歩になります。
ちなみに、決定すること・考えること自体もコストです。毎日の食事選びをラクにしたい方は時短×健康ブログもどうぞ。

