👉 大人のASDの全体像については「大人のASD(自閉スペクトラム症)とは?特徴・診断・支援を精神科医が解説」をご覧ください。
大人になってからASD(自閉スペクトラム症)と診断される方が増えています。子どもの頃は「少し変わった子」で済んでいたものが、社会人になると職場でのコミュニケーションや業務の進め方で困難を感じることがあります。
この記事では、ASDの方が職場で困りやすい場面と、具体的な工夫・配慮のお願いの仕方を解説します。
ASDの方が職場で困りやすい5つの場面
| 困りごと | 背景にあるASDの特性 | よくある状況例 |
|---|---|---|
| 暗黙のルールがわからない | 言外の意味を読み取ることの困難 | 「適当にやっておいて」と言われて何をすればいいかわからない |
| マルチタスクが苦手 | 一度に複数のことを処理する負荷が高い | 電話応対しながらメモを取りつつ別の作業を並行できない |
| 雑談・飲み会が苦痛 | 社会的なやりとりのパターンが直感的につかみにくい | 休憩時間の雑談で何を話せばいいかわからず孤立しがち |
| 感覚過敏によるストレス | 音・光・匂いへの過敏性 | オフィスの雑音で集中できない、蛍光灯がつらい |
| 急な予定変更に弱い | 見通しが立たない状況への不安が強い | 突然の会議変更やスケジュール変更でパニックになる |
職場でできる具体的な工夫
1. 指示は「具体的・文字ベース」でもらう
- 「適当にやって」→「○○の資料を△△の形式で□□日までに作成してください」と具体的にお願いする
- 口頭指示だけでなく、メールやチャットで文字として残してもらう
- 不明点があれば「○○という理解で合っていますか?」と確認する習慣をつける
2. タスク管理ツールを活用する
- ToDoリスト・タスク管理アプリで「やること」を見える化する
- 優先順位を数字で明示する(1=今日中、2=今週中、3=来週でOK)
- 一つずつ片付ける「シングルタスク」を基本にする
3. 感覚過敏への対策
- ノイズキャンセリングイヤホン:職場で許可があれば使用する
- 座席の工夫:窓際・壁際など刺激が少ない場所をお願いする
- 休憩の確保:昼休みに一人で過ごせる場所を見つけておく
4. 「配慮のお願い」の伝え方
上司や人事に配慮をお願いする際は、以下のように具体的に伝えると伝わりやすくなります。
- 「口頭だけの指示だと混乱しやすいので、メールでも送っていただけると助かります」
- 「急なスケジュール変更はパニックになりやすいので、できれば前日までに教えてください」
- 「雑音で集中できないことがあるので、イヤホンの使用を許可していただけますか」
診断書がある場合は障害者雇用促進法に基づく「合理的配慮」として正式にお願いすることも可能です。
5. 使える支援制度
- 就労移行支援:就職に向けたトレーニングを受けられる(障害者手帳がなくても利用できる場合あり)
- 障害者職業センター:ジョブコーチ支援で職場定着をサポート
- 精神障害者保健福祉手帳:取得することで税制優遇・障害者雇用枠の利用が可能
ASDの強みを活かす
ASDの特性は困難ばかりではありません。以下のような強みとして活かせる場面も多くあります。
- 細部への注意力:ミスを見つけるチェック作業、品質管理
- 特定分野への深い集中力:専門職・研究職・エンジニアリング
- ルールや手順の遵守:マニュアル通りの正確な作業
- 論理的思考:データ分析、プログラミング
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まとめ
- ASDの方は「暗黙のルール」「マルチタスク」「感覚過敏」で職場で困りやすい
- 指示の具体化・文字ベース化、タスク管理ツール、感覚過敏対策が有効
- 配慮のお願いは具体的に。合理的配慮は法律で認められた権利
- ASDの特性を「強み」として活かせる仕事もたくさんある
【免責事項】本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状が続く場合や気になることがある場合は、医療機関を受診してください。
著者:精神保健指定医・長友恭平(よつば加納クリニック院長)
著者:精神保健指定医・長友恭平(よつば加納クリニック院長)
参考文献
- 日本精神神経学会「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」(医学書院、2014年)
- 厚生労働省「発達障害のある方への職場における配慮事例集」
- 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「発達障害者の就労支援」
- National Autistic Society (UK). “Employment Tips for Autistic Adults.” 2023.
🩺 院長コメント(長友 恭平)
ASDの方が職場で最も困ることは「暗黙のルール」への対応です。「普通はこうする」という前提を共有できないと感じる方に、「言語化してもらえれば動ける」という強みを活かす働き方を一緒に考えます。
ちなみに、決定すること・考えること自体もコストです。毎日の食事選びをラクにしたい方は時短×健康ブログもどうぞ。

