「いびきがひどいと家族に言われる」「朝起きても疲れが取れない」「昼間に強い眠気があり仕事中に居眠りしてしまう」——これらは睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)の代表的な症状です。
SASは内科・耳鼻科の領域でもありますが、精神科的な不眠・抑うつ・集中困難と深く関わっており、精神科薬の副作用として悪化する場合もあるため、精神科医も重視すべき疾患です。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠中に気道が狭まったり完全に閉塞したりすることで、呼吸が繰り返し止まる(無呼吸)または浅くなる(低呼吸)状態です。1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)が5回以上で診断され、15回以上が中等度、30回以上が重度とされます。
日本の成人男性の約3〜7%、女性の約2〜5%にみられると推定されています。
なぜ問題になるのか
無呼吸が繰り返されると脳は何度も覚醒(浅い目覚め)して呼吸を再開させます。本人が「眠れた」と感じていても、睡眠の質は著しく低下しており、慢性的な酸素不足が全身に影響します。
- 精神面:抑うつ・不安・集中困難・記憶力低下・気分の不安定
- 身体面:高血圧・心臓病・脳卒中・糖尿病のリスク増加
- 社会面:居眠り運転・仕事効率の著しい低下
精神科との関連
うつ病の症状と類似しているため(気力低下・倦怠感・集中困難・睡眠の問題)、SASがうつ病として誤診・見逃されるケースがあります。また、抗うつ薬・睡眠薬・抗不安薬などの精神科薬の中には筋肉を弛緩させる作用があり、SASを悪化させることがあります。
診断:簡易検査と精密検査
診断には自宅でできる簡易検査(携帯型モニター)と、入院または医療施設での終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)があります。簡易検査では指や鼻にセンサーをつけて自宅で一晩測定します。内科・耳鼻科・睡眠専門外来などで検査を受けることができます。
治療法
CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
中等度〜重度のSASに対して最も標準的な治療法です。就寝中にマスクを装着し、陽圧の空気を送り込むことで気道を広げ続けます。保険適用(月2回以上の通院が条件)があり、多くの患者さんで昼間の眠気・血圧・抑うつ症状の改善が報告されています。
生活習慣の改善
- 体重減少:肥満はSASの主要なリスク要因。体重の10%減少でAHIが改善することがある
- 飲酒・睡眠薬の見直し:就寝前の飲酒・筋弛緩作用のある薬は気道閉塞を悪化させる
- 横向き就寝:仰向けより気道が広がりやすい
マウスピース(口腔内装置)
軽〜中等度のSASや、CPAPが使えない場合に下顎を前方に固定するマウスピースが選択肢になります。歯科で作製します。
受診の目安
- 大きないびき・呼吸が止まると家族に指摘されている
- 毎日十分寝ているはずなのに昼間に強い眠気がある
- うつ病・不眠の治療をしているが改善しない
- 朝起きたときに頭痛・口の乾燥がある
精神科・心療内科に通院中の方で上記に当てはまる場合は、担当医に相談してみてください。
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まとめ
- SASは睡眠中の繰り返す無呼吸により睡眠の質が著しく低下する疾患
- 抑うつ・集中困難など精神科症状と酷似しており見逃されやすい
- 中等度〜重度にはCPAP療法が第一選択で、保険適用あり
- 精神科薬が悪化要因になることがあるため主治医への相談が重要
著者:精神保健指定医・長友恭平(よつば加納クリニック院長)
参考文献
- 日本睡眠学会「睡眠時無呼吸症候群の診断・治療ガイドライン」(2020年版)
- 厚生労働省「睡眠時無呼吸症候群の基礎知識」(2022年)
- Peppard PE, et al. “Increased prevalence of sleep-disordered breathing in adults.” Am J Epidemiol, 2013.
🩺 院長コメント(長友 恭平)
SASは「いびきの問題」として軽く見られがちですが、未治療のまま放置すると心血管疾患リスクが高まり、うつ症状とも深く関わります。精神科外来で「抗うつ薬が効かない」という方にSASが見つかるケースもあり、睡眠の質の評価を重視するようにしています。CPAP治療で気分が劇的に改善する方も多いです。
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