寝つきが悪い・夜中に何度も目が覚める・熟睡できない——こうした症状が週3回以上、3ヶ月以上続き、日中の仕事や学業に支障が出る状態を不眠症と診断します。成人の約30%が不眠症状を経験し、そのうち6〜10%が不眠症の診断基準を満たすとされています。
不眠のタイプ
- 入眠困難:布団に入ってもなかなか眠れない(30分以上かかる)
- 中途覚醒:夜中に何度も目が覚める
- 早朝覚醒:予定より2時間以上早く目が覚め、眠れなくなる(うつ病に多い)
- 熟眠障害:眠った時間は十分でも、ぐっすり眠れた感覚がない
生活習慣の改善が最重要
睡眠薬を使う前に、まず生活習慣を見直すことが重要です。
- 起床後30分以内に日光を浴びる(体内時計をリセット)
- 昼寝は15時前・30分以内(夜の眠りに影響させない)
- 就寝4〜6時間前のカフェイン摂取を避ける
- 寝る直前の飲酒は睡眠の質を下げる
- 就寝1時間前はスマートフォン・PCを控える(ブルーライトがメラトニン分泌を抑制)
睡眠薬の種類
睡眠薬には複数の種類があり、特徴・副作用が異なります。
| 種類 | 代表薬 | 特徴 |
|---|---|---|
| ベンゾジアゼピン系 | ニトラゼパム(ベンザリン・ネルボン)等 | 効果は高いが依存・翌日眠気のリスクあり |
| 非ベンゾジアゼピン系 | ゾルピデム(マイスリー)等 | 依存リスクやや低いが中途覚醒には弱い |
| メラトニン受容体作動薬 | ラメルテオン(ロゼレム) | 依存性なし・体内時計調整に有効 |
| オレキシン受容体拮抗薬 | スボレキサント(ベルソムラ)・レンボレキサント(デエビゴ) | 依存性なし・中途覚醒にも有効・翌日眠気に注意 |
加齢と睡眠
加齢とともに睡眠時間は短縮し、中途覚醒・早朝覚醒が増えます。これは自然な変化であり、高齢者に若い頃と同じ8時間睡眠を求めることは必ずしも適切ではありません。
受診を考える目安
不眠が「慢性不眠症」と診断されるのは、週3回以上の不眠が3か月以上続き、日中の機能(仕事・生活)に支障をきたしている場合です(睡眠薬適正使用ガイドライン2013準拠)。
以下に当てはまる方は医療機関への相談を検討してください。
- 寝付きの悪さ・途中覚醒・早朝覚醒が週3回以上、3か月以上続いている
- 市販の睡眠補助薬を試したが改善しない
- 日中の強い眠気・集中力低下が続いている
- 不眠と同時に気分の落ち込みや強い不安がある
参考文献・出典
- American Psychiatric Association. DSM-5 Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. APA. 2013.
- 日本睡眠学会. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン. 日本睡眠学会. 2014.
- Schutte-Rodin S, et al.. Clinical guideline for the evaluation and management of chronic insomnia in adults. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2008.
- Buysse DJ. Insomnia. JAMA. 2013.
- Ohayon MM. Epidemiology of insomnia: what we know and what we still need to learn. Sleep Medicine Reviews. 2002.
🩺 院長コメント(長友 恭平)
不眠の相談は精神科の外来で最も多い訴えの一つです。罹病期間が長くなるほど不眠が慢性化しやすいため、早めの対処をお勧めしています。睡眠薬に抵抗感をお持ちの方も多いですが、睡眠衛生指導と適切な薬剤使用で生活リズムを整えることが回復への近道になります。
薬に頼らない治療:不眠症の認知行動療法(CBT-I)
不眠の治療は睡眠薬だけではありません。「不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)」は、睡眠薬に頼らない治療法として世界的なガイドラインでも推奨されています。日本でも2026年6月から、一定の条件を満たす患者さんを対象にCBT-Iが保険診療で受けられるようになりました。
保険診療でのCBT-Iは、医師が「Medcle(メドクル)」というスマートフォンアプリを処方する形で行われます。睡眠日誌・刺激統制法・睡眠制限法・認知再構成といった内容を、チャット形式でアプリが日々サポートする仕組みです。処方する医師は所定の研修を修了している必要があり、すべての医療機関で受けられるわけではありません。対応の可否は受診先に直接ご確認ください。
CBT-Iは主に次の要素を組み合わせて行います。
- 睡眠日誌:まず1〜2週間、就寝・起床時刻や中途覚醒の様子を記録し、現状を把握する
- 刺激統制法:ベッドを「眠るためだけの場所」にする(ベッドで読書・スマホ操作をしない等)
- 睡眠制限法(臥床時間制限):ベッドにいる時間をあえて短く設定し、眠りの質を高める
- 認知再構成:「8時間眠らなければならない」といった睡眠についての思い込みを見直す
保険診療でのCBT-Iは、うつ病や不安障害を合併する不眠症の方、または2種類以上の睡眠薬を使っても効果が不十分と医師が判断した方が対象です。30分を超える面接を8回まで受けられます(2026年6月時点)。対象となるかどうかは主治医にご確認ください。
よくある質問(Q&A)
Q1. CBT-Iは誰でも保険で受けられますか?
対象は、うつ病・不安障害を合併する不眠症の方、または2種類以上の睡眠薬を使用しても効果が不十分と医師が判断した方です。すべての方が対象になるわけではないため、まずは主治医にご相談ください。
Q2. 睡眠制限法はつらくありませんか?
一時的に日中の眠気が強くなることがありますが、専門家の指導のもとで安全に行います。自己流で極端に時間を削るのではなく、必ず医療者と相談しながら進めてください。
Q3. 睡眠薬とCBT-Iは併用できますか?
はい、併用は可能です。CBT-Iを通じて睡眠の質が改善してきた段階で、主治医と相談しながら薬を減らしていくという進め方も一般的です。
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著者:長友 恭平(精神保健指定医 / よつば加納クリニック 院長)|最終更新:2026年4月
ちなみに、決定すること・考えること自体もコストです。毎日の食事選びをラクにしたい方は時短×健康ブログもどうぞ。
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