ゲーム依存症(ゲーム障害)の治療と回復|精神科医が解説

依存症

👉 行動依存症の全体像については「行動依存症(ギャンブル・ゲーム・スマホ)とは?症状・治療を精神科医が解説」をご覧ください。

2019年、WHO(世界保健機関)はゲーム障害(Gaming Disorder)を国際疾病分類ICD-11に正式に収載しました。「ゲームのしすぎ」は単なる意志の弱さではなく、脳の報酬系の機能変化が関わる医学的な状態として認識されています。

この記事では、ゲーム障害の診断基準・治療プログラム・家族ができることを解説します。

ゲーム障害の診断基準(ICD-11)

以下の3つが12か月以上(重症の場合はより短期間でも)続いている場合に診断される可能性があります。

  1. ゲームに対するコントロールの障害:開始・頻度・時間・状況・終了などをコントロールできない
  2. ゲームの優先度が上がる:他の日常活動や関心事よりもゲームが優先される
  3. 問題が起きても続ける:学業・仕事・健康・対人関係に悪影響が出ているにもかかわらずゲームを継続・拡大する

ポイントは「時間の長さ」だけでは診断されないということです。日常生活への重大な支障があるかどうかが重要です。

ゲーム障害の治療プログラム

1. 認知行動療法(CBT)

ゲーム障害の心理療法として最もエビデンスがあるとされているのが認知行動療法です。

  • ゲームをする「きっかけ(トリガー)」を特定する
  • ゲームに代わる活動を計画する
  • 「ゲームをしないと不安」「ゲームでしか達成感が得られない」といった考え方を見直す

2. 動機づけ面接法

本人が「治療したい」と感じていない場合に特に有効です。

  • 「ゲームをやめろ」ではなく「ゲームとの付き合い方について一緒に考えましょう」というスタンス
  • ゲームの良い面も認めつつ、失っているものに気づく対話を重ねる

3. デジタルデトックス入院・キャンプ

日本でも一部の医療機関で「ネット依存・ゲーム依存」の専門外来や入院治療を行っています。

  • 久里浜医療センター(神奈川県)——日本で最初にネット依存専門外来を開設
  • 一定期間デジタル機器から離れ、生活リズムの立て直しを図る

4. 薬物療法

ゲーム障害に対する特効薬はありませんが、併存するうつ病・ADHD・不安障害に対して薬物療法が行われることがあります。

  • ADHDの併存が多く、メチルフェニデート〔コンサータ〕やアトモキセチン〔ストラテラ〕で衝動性が改善するとゲーム行動も軽減する場合があるとされています

家族ができること

  • 「取り上げる」より「ルールを一緒に作る」:一方的にゲーム機を没収すると関係が悪化します。「1日2時間まで」など本人と話し合ってルールを決めましょう
  • ゲーム以外の居場所を作る:部活・趣味・家族での外出など、ゲーム以外で達成感や楽しさを感じられる活動を一緒に探す
  • 責めない:「また1日中ゲームして」と責めると逆効果になることがあります。「心配している」というI(アイ)メッセージで伝えましょう
  • 専門機関に相談する:本人が受診を嫌がる場合でも、家族だけでまず相談することができます

ゲーム障害になりやすい方の特徴・背景

ゲーム障害は特定の人にだけ起こるものではありませんが、以下のような要因が重なると発症リスクが高まるとされています。

  • ADHD・ASD(自閉スペクトラム症)の特性がある:衝動性の高さ、特定のことへの強い没入感など、ゲーム障害との関連が複数の研究で示されています。ADHDの方では適切な治療でゲーム行動も改善することがあります
  • うつ病・不安障害がある:リアルの世界での失敗感・孤独感・不安を、ゲームの中での達成感・つながりで補おうとするパターン
  • 不登校・引きこもり状態にある:現実の居場所がなくなったとき、ゲームが唯一の「居場所」になりやすい
  • 家庭環境のストレス:家庭内の緊張や不和を避けるためにゲームに没入する場合がある

これらの背景があることは「言い訳」ではなく、治療を考える上で重要な情報です。ゲーム行動そのものだけを問題にするのではなく、背景にある困難に向き合うことが回復への近道です。

「ゲームをやめたくない」本人との向き合い方

ゲーム障害の治療で最も難しいのは、本人が「問題だと思っていない」ケースです。特に10代〜20代では「自分はゲーマーであることが誇りだ」「ゲームをやめたら何も残らない」という感覚があることも多いです。

この場合に有効なアプローチとして、動機づけ面接(MI)があります。「ゲームをやめろ」という対立的なアプローチではなく、以下のような対話を積み重ねます。

  • 「ゲームのどんなところが好きなの?」(ゲームの良い面を認める)
  • 「ゲームをしている時間と、したかったのにできなかったことって、何かある?」(失っているものに自分で気づく機会)
  • 「これから5年後、どんな自分でいたいと思う?」(未来のビジョンを引き出す)

日常生活の立て直し——具体的なステップ

ゲーム障害からの回復では、ゲームをやめるだけでなく、ゲームの代わりに満足感や達成感が得られる活動を見つけることが不可欠です。

ステップ1:生活リズムを整える

睡眠・食事・外出の基本的なリズムが崩れていることが多いため、まずここから整えます。「朝8時に起きる」だけを最初の目標にするなど、小さな目標から始めることが重要です。

ステップ2:ゲーム以外の「軽い楽しみ」を試す

ゲームから突然「何もしない」状態に移行すると、強い不快感(離脱症状的な状態)が生じることがあります。ゲームより刺激の少ない活動(散歩・音楽・料理など)を少しずつ試してみましょう。

ステップ3:リアルのつながりを一つ作る

対人関係に困難がある場合は、まず家族との関係から整えることが現実的です。「一緒に食事する」「同じ空間にいる」という小さな共有から始めます。

よくある質問(Q&A)

Q. 何時間からゲーム障害になりますか?

時間だけでは判断できません。「4時間でも問題ない人」も「2時間で日常生活に支障が出る人」もいます。重要なのは、①コントロールできているか②他の生活(睡眠・学業・対人関係)に影響が出ているか③問題があっても続けているか、の3点です。

Q. 親としてゲームを禁止すべきですか?

一方的な禁止は反発を生みやすく、ゲームを隠れてする・家出する・暴力的になるなど、関係悪化につながることがあります。禁止よりも「ルールを一緒に決める」アプローチが推奨されます。ただし、身体的な健康被害(不眠・低栄養など)がある緊急時は、専門家の助けを借りてより強い介入が必要なこともあります。

Q. 入院治療はどんな内容ですか?

専門的な入院プログラムでは、一定期間デジタル機器から離れ、生活リズムの立て直し・集団療法・個別面談を行います。久里浜医療センターなど日本でも専門施設があります。入院の適応は、外来治療で改善しない場合・身体的に危険な状態の場合などに検討されます。

まとめ:よつば加納クリニックより

  • ゲーム障害はICD-11に収載された医学的状態で、「意志の問題」ではない
  • 診断のポイントは時間の長さでなく「コントロール喪失・優先度上昇・問題継続」の3点
  • 治療は認知行動療法・動機づけ面接・薬物療法(併存疾患の治療)が中心
  • 家族は「取り上げる」より「ルールを一緒に作る」「ゲーム以外の居場所を探す」アプローチが有効
  • 背景にあるADHD・うつ・不登校などに向き合うことが根本的な回復につながる

ゲーム障害について「本人に受診させたいが嫌がっている」「どこに相談すればよいかわからない」という場合は、家族だけでまず相談することができます。よつば加納クリニックでも、ゲーム障害・ネット依存についての外来相談をお受けしています(専門的な入院プログラムは実施しておりません)。

⚠️ よつば加納クリニックについて

当院(よつば加納クリニック)は外来精神科・心療内科クリニックであり、ゲーム障害・ネット依存症に対する専門的な治療プログラムや入院治療は実施していません

専門的な治療が必要な方は、下記をご参照ください。

  • 国立病院機構 久里浜医療センター(日本初のネット依存専門外来を開設・全国から受診可能)
  • 各都道府県の依存症専門医療機関(厚生労働省が指定)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)

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まとめ

  • ゲーム障害はWHOが認めた医学的な状態。意志の弱さではない
  • 診断は「時間の長さ」ではなく「日常生活への重大な支障」が基準
  • 認知行動療法・動機づけ面接・専門入院プログラムなどの治療法がある
  • 家族は「取り上げる」より「一緒にルールを作る」アプローチが有効
【免責事項】本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状が続く場合や気になることがある場合は、医療機関を受診してください。

著者:精神保健指定医・長友恭平(よつば加納クリニック院長)

参考文献

  • World Health Organization. “ICD-11: Gaming Disorder.” 2019.
  • 樋口進. 「ネット依存・ゲーム依存がよくわかる本」 講談社, 2021.
  • 厚生労働省「ゲーム依存症対策関係者連絡会議 資料」(2020年)
  • King DL, et al. “Treatment of Internet gaming disorder: An international systematic review and CONSORT evaluation.” Clin Psychol Rev. 2017;54:123-133.

🩺 院長コメント(長友 恭平)

ゲームに依存する背景には、現実の生活での孤独・困難・承認欲求が隠れていることが多いです。「ゲームを取り上げれば解決する」という考えは有効ではなく、現実の生活の問題に目を向けることが治療の出発点になります。

ちなみに、決定すること・考えること自体もコストです。毎日の食事選びをラクにしたい方は時短×健康ブログもどうぞ。

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