依存症について ── お酒・ギャンブル・スマホとの向き合い方

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「やめようと思っているのにやめられない」。依存症は、意志の弱さではなく、脳の報酬系に関わる医学的な問題です。適切な治療とサポートによって回復が可能です。このページでは、依存症の仕組み・種類・回復のプロセス・家族のできることについて解説します。

依存症とは何か:意志の問題ではない

依存症は、以前は「だらしない」「意志が弱い」人がなるものと思われていました。しかし現代の医学では、依存症は「脳の病気」として理解されています。依存の対象(アルコール・薬物・ギャンブル・ゲームなど)に繰り返し接触することで、脳の報酬系(ドーパミン系)に変化が起き、「やめたいのにやめられない」状態が作り出されます。 「やめれば治る」「意志が強ければやめられるはず」という考え方は正確ではありません。依存症は適切な治療とサポートが必要な病気です。

依存症の共通メカニズム

アルコール・ギャンブル・スマホ・買い物・薬物など、依存の対象は異なっても、共通して「報酬系(ドーパミン回路)」の変化が関わっています。
  • 渇求(クレービング):「もっと欲しい・やりたい」という強い衝動。意識してコントロールしようとしても勝てないことが多い
  • 耐性:同じ満足を得るためにどんどん量が増える(お酒の量が増える・賭け金が大きくなるなど)
  • 離脱症状:やめようとすると体・心の不快感(震え・発汗・不眠・強い不安など)が出てくる
  • コントロール喪失:「少しだけ」のつもりがやめられなくなる

依存症の種類

依存症は大きく「物質依存」と「行動嗜癖(プロセス依存)」に分類されます。 物質依存(アルコール・薬物など)
  • アルコール依存症:日本で最も多い依存症のひとつ。身体依存が生じると、急に飲酒をやめると離脱せん妄など危険な状態になることがある
  • 薬物依存:覚醒剤・大麻・処方薬の乱用など。処方薬(睡眠薬・鎮痛薬)の依存も増加している
  • タバコ(ニコチン依存):医学的には依存症として分類される
行動嗜癖(プロセス依存)
  • ギャンブル障害:パチンコ・競馬・オンラインカジノなど。家族・職場・財産への影響が大きい
  • ゲーム障害:WHO(世界保健機関)が2019年に「ゲーム障害」として国際疾患分類に収載。特に10〜20代に多い
  • SNS・スマホ依存:スマホを手放せない・寝る前から明け方まで使ってしまうなど。特に若年層での問題が増えている
  • 買い物依存・過食:ストレス解消のためにコントロールできない購買行動・摂食行動が続く

アルコール依存症について詳しく

アルコール依存症は、日本で推定80万人以上いるとされますが、治療を受けている人はその約1割程度という現状があります。「毎日飲んでいる」「飲まないとイライラする・眠れない」「飲む量が増えてきた」という方は、アルコール依存症の可能性を考えてみてください。 身体的依存(震え・発汗・せん妄)が生じているアルコール依存症では、急に飲酒をやめると危険を伴う場合があります。「やめたい」と思っている方は、自己判断での断酒の前に医療機関へ相談することをお勧めします。入院治療・外来での解毒・抗酒薬(ノックビン・レグテクト)を使った治療などがあります。

回復のプロセス

依存症の回復は、一度やめれば終わりではなく、長期にわたって断ち続けるプロセスです。「スリップ(再飲酒・再使用)」は回復の過程でよくあることであり、失敗ではなく「回復途上の出来事」として捉えることが重要です。 回復の段階として、しばしば以下のようなモデルが参考にされます。
  • 前熟考期:「やめる必要はない」と思っている段階
  • 熟考期:「問題があるかもしれない」と気づき始める段階
  • 準備期:「変わろう」と決意する段階
  • 行動期:実際にやめる・減らす行動を始める段階
  • 維持期:変化を継続する段階(スリップへの対処も含む)

治療と回復支援

依存症の治療には、医学的治療と心理社会的支援の両方が重要です。
  • 医療機関での治療:解毒(身体的依存の安全なやめ方)・薬物療法(抗酒薬・禁煙補助薬など)・精神科的治療
  • 認知行動療法:依存行動のトリガー(引き金)を特定し、代替行動を学ぶ
  • 自助グループ:断酒会・AA(アルコホーリクス・アノニマス)・ギャンブラーズアノニマス(GA)・SMART Recovery など。同じ体験を持つ仲間からのサポートが回復の大きな力になる
  • 依存症専門病院・相談センター:各都道府県の精神保健福祉センターや依存症専門医療機関に相談窓口がある

家族の方へ

依存症の家族を持つ方も、深刻な影響を受けることが少なくありません。「イネーブリング(無意識の問題行動の助長)」という概念があります。たとえば、「お酒を買って来てあげる」「借金を肩代わりする」「飲んだ後の後始末をする」などの行動が、結果として本人の依存を続けやすくしてしまうことがあります。
  • アラノン(Al-Anon:アルコール依存症の家族向け自助グループ)の活用
  • ギャマノン(ギャンブル依存の家族向け)の活用
  • 精神保健福祉センターの家族相談
「本人を変えよう」とするより、まず家族自身が回復し・境界線を引く・自分自身の生活を大切にすることが重要です。

こんなときは受診を

  • 「やめたいのにやめられない」状態が続いている
  • 飲酒・ギャンブルなどのために仕事・家庭・経済的な問題が起きている
  • やめようとすると体に症状(震え・発汗・不安)が出る
  • 家族に「問題ではないか」と指摘されている

よつば加納クリニックでの対応

当院では、アルコール依存のみ専門的な治療をご提供しております。その他の依存症については対応できません。申し訳ございません。

よくある質問

Q. 依存症と習慣はどう違いますか?

A. 「毎日お酒を飲む」「毎日ゲームをする」という習慣が問題なわけではありません。依存症と習慣の違いは、「コントロールできるか」「やめようとしてもやめられないか」「日常生活に支障が出ているか」にあります。やめたいと思ってもやめられない・生活への影響が出ている場合は、依存症としての評価が必要です。

Q. 自分は依存症じゃない、ただ好きなだけという気持ちがあります。

A. 依存症の特徴のひとつに「否認(自分が依存症だと認めない)」があります。「自分は違う」という気持ちが強い場合も、家族や周囲の人から問題を指摘されているなら、専門家に一度評価してもらうことをお勧めします。

Q. スリップしてしまいました。もう終わりですか?

A. スリップは回復の失敗ではありません。多くの人がスリップを経験しながら、長期的な回復に向かいます。スリップをきっかけに「何が引き金だったか」「次回どうするか」を担当医や自助グループと振り返ることが大切です。諦めずに続けることが回復につながります。

まとめ

依存症は、意志の問題ではなく、脳の変化を伴う医学的な問題です。物質依存(アルコール・薬物)から行動嗜癖(ギャンブル・ゲーム・スマホ)まで、形は異なっても共通するメカニズムがあります。適切な治療・自助グループ・家族支援を組み合わせることで、回復が可能です。「やめたいのにやめられない」と感じているなら、一人で抱え込まず、専門家に相談してください。

依存症の回復を支える制度と資源

依存症の治療・回復には、医療だけでなく福祉的なサポートも重要です。各都道府県に設置されている「依存症相談拠点(精神保健福祉センター)」では、依存症の本人・家族からの相談を受け付けています。費用は無料で、医療機関・自助グループへの橋渡しも行ってくれます。 ギャンブル障害・アルコール依存症の治療には、自立支援医療(精神通院医療)が適用される場合があります。医療費の自己負担が1割に軽減されるため、長期的な治療継続を助けます。 就労・生活のサポートとして、社会復帰を支援する「精神科デイケア」「就労移行支援」「地域活動支援センター」なども活用できます。担当医や精神保健福祉センターのソーシャルワーカーに相談することで、地域の資源を案内してもらえます。

参考文献

  • 日本精神神経学会
  • 厚生労働省 みんなのメンタルヘルス

監修: 精神保健指定医 長友恭平(よつば加納クリニック院長)

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