監修・執筆
長友 恭平(ながとも きょうへい)
精神保健指定医 / 標榜:精神科・心療内科
よつば加納クリニック 院長
精神科専門外来での診療経験をもとに執筆しています。
統合失調症の治療では抗精神病薬が中心的な役割を果たします。「どんな薬があるのか」「副作用はどう違うのか」「注射の薬があると聞いた」——こうした疑問をお持ちの患者さんや家族の方に向けて、精神科医がわかりやすく解説します。
第一世代(定型)と第二世代(非定型)の違い
抗精神病薬は大きく2世代に分けられます。
- 第一世代(定型)抗精神病薬:ハロペリドール〔セレネース〕、クロルプロマジン〔コントミン/ウインタミン〕、レボメプロマジン〔ヒルナミン〕など。幻覚・妄想(陽性症状)には効果的ですが、錐体外路症状(EPS)——手の震え、筋肉の硬直、じっとしていられない感じ(アカシジア)——が出やすい
- 第二世代(非定型)抗精神病薬:第一世代と比べEPSが少ない。陽性症状だけでなく陰性症状(意欲低下・感情平板化)にも効果が期待できる。現在、治療の主流
主な第二世代抗精神病薬の特徴
| 薬(商品名) | 特徴・強み | 注意すべき副作用 |
|---|---|---|
| リスペリドン〔リスパダール〕 | 汎用性が高く世界的に使用実績豊富。液剤・内服液もあり | 高プロラクチン血症(月経不順・乳汁分泌)、EPS(比較的出やすい) |
| オランザピン〔ジプレキサ〕 | 鎮静・睡眠改善効果が強い。陰性症状にも効果的 | 体重増加・高血糖(糖尿病への禁忌。糖尿病や肥満の方には使いにくい) |
| クエチアピン〔セロクエル〕・徐放剤〔ビプレッソ〕 | EPSが最も少ない部類。催眠・抗不安作用も | 体重増加、過鎮静、血糖への影響(糖尿病・糖尿病疑いに禁忌)。セロクエルとビプレッソで保険適応が異なるため要確認 |
| アリピプラゾール〔エビリファイ〕 | 体重・血糖への影響が少ない。過鎮静が少なく日中活動しやすい | アカシジア(落ち着きのなさ)が出る場合がある |
| パリペリドン〔インヴェガ〕 | リスペリドンの活性代謝物。腎排泄型のため肝機能障害に比較的使いやすい | 高プロラクチン血症、腎機能低下時は用量調整が必要 |
| ブロナンセリン〔ロナセン〕 | 高プロラクチン血症が少ない。テープ剤(貼り薬)あり | 食事の影響を受けやすい(食後服用が必要)、EPS |
| ルラシドン〔ラツーダ〕 | 双極性うつ病への保険適応もある | アカシジア、食後服用が必要 |
持効性注射剤(LAI)——「打つ薬」の選択肢
抗精神病薬には、2週間〜1ヶ月に1回の注射で持続的に効果が続く持効性注射剤(LAI: Long-Acting Injection)があります。
LAIが向いているのは:
- 毎日の服薬管理が難しい方
- 「飲み忘れ」「服薬をやめたい」という衝動が再発のきっかけになっている方
- 口頭では「飲んでいる」と言うが実際に飲んでいないことがある方
主なLAI:パリペリドンLA〔ゼプリオン〕(1ヶ月・3ヶ月製剤あり)、アリピプラゾール水懸注射液〔エビリファイ持続性水懸注〕、リスペリドンLA〔リスパダールコンスタ〕など。
薬を選ぶポイント
抗精神病薬の選択は、「どれが一番いい薬か」ではなく、その方の病態・既往症・生活スタイルに合わせて個別に決めるものです。
- 糖尿病・肥満がある → オランザピン・クエチアピンは避ける
- 肝機能が低下している → 肝代謝の少ないパリペリドンを考慮
- 月経不順・骨密度低下が心配 → 高プロラクチン血症を起こしにくい薬を選ぶ
- 服薬管理が難しい → LAIを検討
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副作用が出たらどうする
抗精神病薬の主な副作用と対処法を知っておくことが大切です。
- EPS(錐体外路症状):手の震え・筋肉の硬直・アカシジア。主治医に報告し、抗パーキンソン薬の追加や薬の変更を検討
- 体重増加・血糖上昇:定期的な体重・血糖チェックが必要。食事・運動の指導と組み合わせる
- 高プロラクチン血症:月経不順・乳汁分泌・性機能障害が出ることがある。主治医に相談
- 過鎮静:日中の強い眠気。生活に支障が出る場合は主治医に相談
よくある質問
Q1. 抗精神病薬は一生飲まないといけませんか?
統合失調症の場合、再発率が非常に高いため継続が必要なことが多いです。自己判断でやめると急激に再発するリスクがあります。
Q2. 「抗精神病薬を飲むと廃人になる」と言われました。
これは誤解です。現在の第二世代抗精神病薬は、症状をコントロールしながら生活の質を保てるように設計されています。副作用が強い場合は薬の変更で対処できることが多いです。
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🩺 院長コメント(長友 恭平)
「一生飲み続けないといけないの?」とよく聞かれます。薬は症状を安定させ、再発を防ぐための重要なツールです。ただし、減薬・中止については一緒に考えることができます。副作用で困っていることがあれば、我慢せずに教えてください。選択肢はあります。
この記事に関連する書籍
統合失調症・抗精神病薬についてさらに詳しく知りたい方へ。
参考文献
- 日本精神神経学会「統合失調症薬物治療ガイドライン 2022」
- 日本精神神経学会「精神科薬物療法研修テキスト」(第4版)
- Leucht S, et al. “Comparative efficacy and tolerability of 15 antipsychotic drugs.” Lancet. 2013;382(9896):951-962.
長友 恭平(ながとも きょうへい)
精神保健指定医・精神科専門医|よつば加納クリニック院長
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