自傷行為・「死にたい」気持ちへの対処|精神科医が伝えたいこと

未分類

つらい気持ちが今ある方へ——ひとりで抱え込まないでください

  • 📞 よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応・無料)
  • 📞 いのちの電話:0570-783-556(毎日16時〜21時)
  • 📞 こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
  • 🚨 緊急時は 119(救急)または 110(警察)

「死にたい」「消えてしまいたい」——そうした気持ちは、追い詰められた心が発するSOSです。この記事を読んでくださっているあなたが、今つらい状況にあるかもしれません。あるいは、大切な人の変化に気づいて、ここにたどり着いたのかもしれません。

この記事では、自傷行為や希死念慮(「死にたい」という考え)について、精神科医の立場からお伝えしたいことを整理します。一人で抱え込まず、この記事が少しでも助けになれば幸いです。

自傷行為の理解——なぜ起きるのか

自傷行為(リストカット、過量服薬、身体を叩くなど)は、多くの場合「死ぬため」ではなく、「つらさをコントロールするための手段」として行われます。

  • 言葉にできないほどのつらさを、身体の痛みに置き換えることで一時的に楽になろうとする行為
  • 「自分が悪い」と罰を与えるような感覚で行われることもある
  • 感情が麻痺して「何も感じない」状態から抜け出すために行う場合もある
  • 「自傷する人は死にたいわけではない」と一概には言えませんが、自傷行為が将来の自殺のリスク因子になることは確かです
  • 自傷行為を「やめなさい」「意志が弱い」と否定するのは逆効果です。背景にあるつらさに目を向けることが大切とされています

精神科医としての経験から:診察室で自傷について話してくれる方の多くは、「やめたいのにやめられない」「誰にも言えなかった」とおっしゃいます。話してくれたこと自体が勇気ある一歩です。自傷を責めることなく、その背後にあるつらさを一緒に理解していくことが、回復への第一歩だと考えています。

「死にたい」という気持ちのグラデーション

「死にたい」という気持ちにはさまざまな段階があり、緊急度が異なります。自分や周囲の人の状態がどの段階にあるかを理解することが、適切な対処につながります。

段階状態の特徴緊急度
漠然とした「消えたい」「いなくなりたい」「逃げ出したい」という気持ち。具体的に死を望んでいるわけではない早めの相談を
受動的な死への願望「事故にあって死ねたらいい」「病気になったら楽になれる」など。自ら行動する意図はないが、死を望んでいる受診を検討
「死にたい」と繰り返し考える具体的な方法は考えていないが、「死」が頭を離れない。生活への支障が出ている受診を強くお勧め
具体的な計画がある時期・場所・方法を考えている。遺書を書いている、大切なものを処分し始めているなど今すぐ相談・受診
実行しようとしているすでに行動に移そうとしている、または手段が手元にある119番・110番

段階に関わらず、「死にたい」と思う気持ち自体が、大変なつらさのサインです。一人で抱え込まずに、誰かに話すことが助けになります。

感情が高まったときの緊急対処法

「死にたい」という気持ちや自傷衝動が強くなったとき、その場で使える緊急対処法をご紹介します。衝動のピークは多くの場合15〜30分です。この時間を乗り越えることが重要です。

今すぐできる5つの方法

  1. 安全な場所に移動する——危険なものが周りにある環境から離れましょう。部屋を変える、外に出るなど
  2. 4-7-8呼吸法——4秒かけて吸い、7秒止めて、8秒かけて吐きます。3〜5回繰り返すことで自律神経が整います
  3. 氷を握る——強い冷たさが感覚をリセットし、衝動が和らぐことがあります
  4. 5-4-3-2-1法(グラウンディング)——今見えるもの5つ・聞こえるもの4つ・触れるもの3つ・匂い2つ・味1つを数えて、現実に意識を戻します
  5. 誰かに連絡する——「今つらい」と一言送るだけでも構いません。よりそいホットライン(0120-279-338)に電話することもできます

緊急時——今すぐ安全が心配な場合

  • 自傷してしまった・または今にもしてしまいそうな場合:よりそいホットライン 0120-279-338(24時間)
  • 生命に危険がある場合:119番(救急)
  • 今すぐ誰かに来てほしい場合:110番(警察)

話せる人を見つける方法——ハードルを下げるアドバイス

「誰かに話したいけど、どう切り出せばわからない」「迷惑をかけたくない」——そういった気持ちがあることは、ごく自然なことです。それでも、誰かに話すことは非常に重要な助けになります。

話すことへのハードルを下げる考え方

  • 完全に話せなくてもいい——「なんかつらくて」「最近しんどい」だけでも伝えることができます
  • 全部話す必要はない——「細かいことは言えないけど、今きつい」という伝え方で大丈夫です
  • 電話が苦手ならチャットや文字でも——よりそいホットラインにはチャット相談もあります
  • 知っている人に話しにくければ、相談窓口を使う——匿名で話せる窓口に話すことから始めるのも一つの方法です

話せる相手の選び方

  • 受け止めてくれそうな人——否定せずに聞いてくれる印象がある人
  • 秘密を守ってくれそうな人——他の人に話してしまうか心配な場合は、最初にそのことを伝えましょう
  • 精神科医・心療内科医——専門的なサポートを受けたい場合
  • 相談窓口——誰にも話せないと感じるときに使えます

相談窓口の一覧

  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料・匿名可)
  • いのちの電話:0120-783-556(毎日16〜21時 / 毎月10日8時〜翌8時)
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(平日 9〜17時頃)
  • チャット相談(よりそいホットライン)困りごとSOS(電話が苦手な方向け)
  • 10代・20代向け:よりそいホットライン 0120-279-338(#5を押すと専門回線)

専門家への相談のタイミングと方法

「精神科に行くべきか迷っている」という方も多いと思います。以下のいずれかに当てはまる場合は、受診を強くお勧めします。

受診を検討すべきサイン

  • 「死にたい」「消えたい」という気持ちが繰り返し出てくる
  • 自傷行為をしている、またはしたいという衝動がある
  • 眠れない・食べられない・仕事や学校に行けないなど、日常生活に支障が出ている
  • 2週間以上、気分の落ち込みや無気力が続いている
  • 孤立感が強く、誰にも話せない状況が続いている

初診の予約から受診までの流れ

  1. 受診先を選ぶ——精神科・心療内科・メンタルクリニックなど。「地域名+精神科」で検索できます
  2. 電話またはネットで予約する——初診は予約が必要な場合が多いです。「気分の落ち込みで相談したい」と伝えるだけで大丈夫です
  3. 受診当日——問診票に症状を記入します。書けないことは口頭でも構いません。「死にたいと思っている」と伝えても怒られることはありません
  4. 医師との面談——いつ頃から・どんな症状があるか・生活状況などを聞かれます。すべて答えられなくても大丈夫です

入院治療が必要なケースの見分け方

ほとんどの方は外来(通院)での治療で回復できますが、以下のような場合は入院による治療が検討されることがあります。入院は「治療の場」であり、安全な環境で集中的に回復できる選択肢の一つです。

入院が検討されるケース

  • 自傷行為が重篤——傷が深い、止血できないなど身体的な危険がある
  • 自殺の具体的な計画がある——時期・場所・方法を考えている状態
  • 外来では安全を確保できない——自宅にいると危険なものが手に届く環境など
  • 精神状態が不安定——現実との区別がつかない、極端に興奮しているなど
  • 通院が難しい状態——外出できない、家族のサポートを受けられないなど

入院について心配なことがあれば、受診時に医師に率直に相談してみてください。任意入院(本人の同意による入院)と医療保護入院(家族の同意による入院)などの種類があります。

回復のプロセスと希望について

精神科での治療には、さまざまなアプローチがあります。どの方法が適切かは、症状や状況によって異なります。

主な治療法

  • 精神療法(カウンセリング)——話すことを通じて、思考パターンや感情の処理の仕方を変えていきます。認知行動療法(CBT)、弁証法的行動療法(DBT)などが代表的です
  • 薬物療法——うつ病・不安障害・双極性障害など、背景にある疾患の治療に使われます。具体的な薬は主治医と相談のうえ決定します
  • 支持的療法——医師やカウンセラーとの定期的な対話を通じて、安心できる関係性を築きながら回復を支える方法

回復について知っておいてほしいこと

  • 回復は直線的ではない——良くなったり悪くなったりしながら、全体としてゆっくり回復していくことが多いとされています
  • 「希望を持てない」という感覚自体が症状——うつ状態のときは「どうせ良くならない」という思考になりやすいですが、これも症状の一つです
  • 多くの人が回復している——適切な治療を受けることで、多くの方が日常生活を取り戻しています
  • 時間をかけていい——急いで「普通に戻ろう」とする必要はありません。自分のペースで回復していけます

回復した方へのメッセージ:診察室で「もう良くなれないと思っていた」と言っていた患者さんが、1年後に「あの頃と比べると別人みたいです」と話してくださることがあります。今が一番つらい時期かもしれません。でも、つらさには必ず終わりがあります。一緒に考えていきましょう。

希死念慮・自傷への対処法のまとめ

  • 「死にたい」という気持ちには段階があり、段階によって対処が異なる
  • 自傷行為は「つらさへの対処手段」として起きることが多い——責めることより、背景のつらさに目を向けることが大切
  • 感情が高まったときは、安全な場所に移動し、呼吸法・グラウンディング・電話相談を活用する
  • 話すことへのハードルは低くていい——「なんかつらい」と伝えるだけから始められる
  • 入院は「治療の場」。必要と判断された場合は選択肢の一つとして考えてみてください
  • 回復には時間がかかることがあるが、多くの人が回復している
  • この記事は医療相談に代わるものではありません。症状がある場合は医師にご相談ください

📚 自傷・希死念慮に関する理解を深める書籍

ご自身の回復のため、または大切な人を理解するためにお役立ていただける書籍をご紹介します。

※ 上記リンクはアフィリエイトリンクです。

つらい気持ちが今ある方へ——ひとりで抱え込まないでください

  • 📞 よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応・無料)
  • 📞 いのちの電話:0570-783-556(毎日16時〜21時)
  • 📞 こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
  • 🚨 緊急時は 119(救急)または 110(警察)

【免責事項】本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。この記事は医療相談に代わるものではありません。症状がある場合は医師にご相談ください。

著者:精神保健指定医・長友恭平(よつば加納クリニック院長)

参考文献

  • 松本俊彦「自傷行為の理解と援助」日本評論社, 2009.
  • Nock MK. “Self-injury.” Annu Rev Clin Psychol. 2010;6:339-363.
  • Linehan MM. “Cognitive-Behavioral Treatment of Borderline Personality Disorder.” Guilford Press, 1993.
  • 厚生労働省「自殺対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/
  • 日本精神神経学会「精神科救急ガイドライン」2022年版

この記事の著者

長友 恭平(ながとも きょうへい)

精神保健指定医 / よつば加納クリニック 院長(宮崎県)
宮崎大学医学部卒業|専門:心療内科・精神科

よつば加納クリニック

心療内科・精神科|宮崎県

記事の内容についてご不安な方・受診をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

🩺 院長コメント(長友 恭平)

「死にたい」という気持ちは、今ある苦しみの深さを示しています。その言葉を受け止め、一緒に出口を探すのが私たち精神科医の仕事です。どうか一人で抱え込まないでください。

🆘 こころが限界を感じているとき

つらい気持ち・死にたい気持ちがあるときは、一人で抱え込まずに話してください。

  • よりそいホットライン0120-279-338(24時間・無料)
  • いのちの電話0120-783-556(毎月10日 8:00〜翌朝8:00)
  • 緊急・救急119

詳しくは こころの緊急連絡先ページ をご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました