ハイな状態が続いて寝なくても平気だったかと思うと、その後どん底のうつ状態になる。双極性障害(躁うつ病)は、「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す気分障害です。
躁状態とはどんな状態か
「元気」とは異なり、躁状態では以下のような変化が見られます。
- 睡眠時間が極端に短くても疲れない(3〜4時間でも平気)
- 思考が加速し、アイデアが止まらない
- お金を大量に使う、衝動的な行動をとる
- 自己評価が極端に高くなる
本人は調子がいいと感じていることが多く、「躁状態のときに受診してほしい」というのが医師の願いです。
双極性障害とうつ病の違いが重要な理由
双極性障害に気づかず「うつ病」として抗うつ薬のみを使用すると、躁転(躁状態が誘発される)リスクがあります。正確な診断のために、過去の「ハイな時期」についても医師に伝えることが大切です。
治療の中心は気分安定薬
リチウム・バルプロ酸・ラモトリギンなどの気分安定薬が中心です。服薬を自己中断すると再発リスクが高まるため、調子のよい時期も継続することが重要です。
双極性障害の主な症状と特徴
双極性障害(躁うつ病)は、「躁状態(または軽躁状態)」と「うつ状態」を繰り返す気分障害です。I型(明確な躁状態がある)とII型(軽躁状態とうつ状態を繰り返す)に分類されます。II型は躁状態が目立たないため「ただのうつ」と誤診されやすい特徴があります。
- 躁状態:高揚した気分・異常なほどの自信・睡眠不要感・多弁・大きな計画・衝動的な行動(大量の買い物・性的逸脱・無謀な投資など)
- うつ状態:強い気分の落ち込み・無気力・過眠・希死念慮・集中力低下
- 混合状態:躁とうつの症状が同時に現れ、強い苦しさを伴う
- 双極II型:躁が「軽躁状態」にとどまり、傍から見ると「活気がある」程度に見えることもある
双極性障害の原因とメカニズム
双極性障害の正確な原因は完全には解明されていませんが、遺伝的な要因が強く関与していると考えられています。一卵性双生児での一致率が高いことが知られており、神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン・ノルエピネフリン)の調節異常が関係していると考えられています。ストレス・睡眠不足・季節変化などの環境要因が「引き金」となってエピソードを誘発することもあります。「気持ちの持ち方」「根性」で治るものではなく、適切な医療的管理が必要な疾患です。
うつ病との違い:なぜ正確な診断が重要か
双極性障害のうつ状態は一見「うつ病」と区別がつきにくく、双極性障害を「うつ病」と誤診してSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を単独処方されると、躁転(躁状態の誘発)・混合状態・急速交代型への移行が起きるリスクがあることが知られています。「うつっぽい症状があるが、以前に異常にハイだった時期がある」という場合は、その点を必ず医師に伝えることが重要です。
こんなときは受診を
以下のような状態が見られる場合は、専門家への受診をおすすめします。
- 気分の波が大きく、日常生活・仕事・人間関係に支障が出ている
- 「ハイな時期」に後から後悔するような言動・行動をとってしまった
- うつ病と診断されて薬を飲んでいるが、躁状態のような時期がある
- 自分や家族から「気分の浮き沈みが激しい」と言われたことがある
よつば加納クリニックでの対応
当院では、双極性障害でお悩みの方に対して、丁寧な問診と気分の経過の確認を行い、状態に合わせた治療を提案しています。気分安定薬(リチウム〔リーマス〕・バルプロ酸〔デパケン〕・ラモトリギン〔ラミクタール〕など)を中心とした薬物療法と、生活リズムの管理・心理教育を組み合わせます。妊娠を希望する方の場合は影響の少ない抗精神病薬を優先して選択します。
「もしかして自分もそうかも」と感じたら、一人で抱え込まずにご相談ください。
双極性障害の治療:薬物療法
双極性障害の治療の柱は「気分安定薬」です。急性期(躁・うつエピソード中)の治療と、寛解期(落ち着いている時期)の維持療法は異なるアプローチで行われます。
- リチウム〔リーマス〕:躁状態・うつ状態両方に効果が期待できる代表的な気分安定薬。血中濃度のモニタリングが必要
- バルプロ酸〔デパケン〕:躁状態・混合状態・急速交代型に有効。妊娠中は特に注意が必要
- ラモトリギン〔ラミクタール〕:双極性うつに有効。皮疹(スティーブンス・ジョンソン症候群)のリスクがあるため漸増が必須
- 第二世代抗精神病薬(クエチアピン・オランザピンなど):躁状態・うつ状態補助として使用されることがある
日常生活でできること
双極性障害の管理において、規則正しい生活リズムの維持が非常に重要です。睡眠不足・過度な飲酒・ストレスの急増は躁状態やうつ状態を誘発するリスクがあります。
- 毎日同じ時間に起床・就寝する習慣を徹底する
- 気分の変化を毎日記録する(ムードチャートの活用)
- アルコールを避けるか、量を厳しく制限する
- 「ハイになっている」と感じたら、衝動的な大きな決断を保留する
- 信頼できる家族・支援者に気分の変化を共有し、早めの対処を依頼する
よくある質問
Q. 双極性障害は一生薬を飲み続けなければいけませんか?
A. 多くの場合、再発予防のために長期的な維持療法が推奨されます。自己判断で薬をやめると再発リスクが高まることが知られているため、「調子が良い」と感じても主治医に相談してから調整することが重要です。ただし、個々の状況によって異なるため、主治医とよく相談しながら治療方針を決めていきます。
Q. 躁状態のときは気分が良いので、なぜ治療が必要なのですか?
A. 躁状態は本人には「調子が良い」「何でもできる」と感じられますが、判断力の低下・衝動的な行動(借金・不倫・退職など)・その後の強いうつ状態という深刻な結果をもたらすことがあります。また、重症の躁状態は入院治療が必要になることもあります。早期に気分安定薬で管理することで、このようなリスクを大幅に減らせます。
Q. 家族はどうサポートすれば良いですか?
A. 双極性障害の当事者を支える家族は、「再発のサイン(睡眠減少・多弁・お金を使いすぎ)に気づき、早めに主治医に相談する」という役割が重要です。「元気なのにまた薬を飲ませるのはかわいそう」という判断で薬を止めさせることは再発リスクを高めます。家族自身も主治医・支援機関に相談しながら関わることが大切です。
まとめ
双極性障害は適切な治療と生活管理によって、安定した生活を維持することが可能な疾患です。「気分の波が激しい」という悩みを一人で抱え込まず、専門家に相談することが回復への第一歩です。早期発見・早期治療が、長期的な予後の改善につながります。
参考文献
- 日本うつ病学会「双極性障害(躁うつ病)の診療ガイドライン」
- 厚生労働省 みんなのメンタルヘルス「双極性障害」
- Goodwin FK, Jamison KR. Manic-Depressive Illness. Oxford University Press
家族・周囲の人へのアドバイス
双極性障害の方の周りにいる人は、「躁のときに止めようとすると激しく怒る」「うつのときに励ましても逆効果」など、対応の難しさを感じることが多いです。最も大切なのは「再発のサイン(睡眠が減った・お金を使いすぎる・異常に元気)に気づいたら早めに主治医に連絡する」という行動です。家族自身も精神的に消耗しやすいため、家族会(双極性障害家族会など)への参加や支援機関への相談も有効です。
双極性障害と上手に付き合う長期的な視点
双極性障害は「完治する」という概念よりも、「安定した状態を長く維持する」という視点で取り組む疾患です。多くの方が適切な治療と生活管理によって、就労・家庭生活・社会参加を継続しています。「病気のある自分」を受け入れながら、自分にできること・工夫できることを少しずつ積み重ねていくことが長期的な安定につながります。
監修: 精神保健指定医 長友恭平(よつば加納クリニック院長)
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- いのちの電話:0120-783-556(毎月10日 8:00〜翌朝8:00)
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